雨の日、うつくしい使者と/ホロウ・シカエルボク
 

あなたは世界をかくすほどの傘をさして
しのび足のような雨のなかを歩いている
ひらひらするくるぶしまでのスカートはすこしだけ濡れて
きれいにふちどられたショートケーキのようだ

つばめは果敢にも雨つぶを切り裂きながら
哨戒機のように飛び去っていく
しゅう、という音が見える気がした
少しづつ春が近づいて来るころ

はやり風邪がひどく世間を騒がせて
街は二度と遊べないチェス盤みたい
水溜りがつくるあなたの足跡が
不思議なほどまっすぐに同じ感覚で続いて行く

急いでいたタクシーがブレーキのタイミングを見誤り
集団登校の小学校低学年の列に突っ込む朝
悲鳴と泣声、慌てふた
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