行方知れずの抒情 三/ただのみきや
用=言葉たち}
瓦礫の下の僅かな隙間から
日差しを見つめる白い花があった
やがて花とよく似た蝶がやって来て
ダンスに誘う素振り
幼子の瞳の中 蝶と花は接吻する
記憶の陰影 美しい割礼
風と日差しが撫でる母親よりも
柔らかな女神の掌
なにもないところ
朴訥に落ちた言葉は孤独にあえぎ
結び合い連なる相手を求めたのだ
螢
星の灯は遠く
風に揺らぐことも雨に消されることもない
雲なんて掌の目隠しだ
あの星が消えるのは
自分の内なる命が尽きる時だけ
消されるのではなく消える時だけ
でもそんなことに気づく間もなく
わたしたちは死
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