行方知れずの抒情 三/ただのみきや
 

金糸雀の羽根をはらはら降らせながら

だがそれはいっこうに美しくならなかった

わたしは わたしという
闇の襁褓に包まった得体の知れない養い児を
いつまでも抱えた鬼子母である




現身幻影

風のない朝
稜線に破られた青い壁紙
淡い筋雲を絵柄として留めている

踏み固められた雪道の凹凸に張り付いて
影は蒼ざめながら
本体である木を見上げていた

枝から滴る雪解けの
捉えがたくも回帰する韻律
堪え切れずに叫ぶ鳥は断末魔のよう

木も影を見下ろした
――なんだろう あれは
にわかに風が動くと幻のように消えた




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