画用紙の上に散らばっていくクレパス/ホロウ・シカエルボク
 
、きっとあの時の俺よりも、親父やお袋のほうがずっと怖がりだったはずだ、そうじゃなきゃおかしいさ、親父―親父が死んでからもう何年経つ?喉を癌細胞に占拠されて、目を見開いたまま天井を見つめていた、なにを見ていたんだろうか、死ぬのは怖かっただろうか、それとももう、怖いことなんかなくなっていただろうか、悲しいだけだっただろうか、それともそのすべては、まだ生きていかなくちゃいけないやつらがくっつける戯言だろうか―そういえば、そんな死のことも長いこと思い出さなかった、まるで記憶を波打ち際にさらしているみたいだ、思い出す、忘れる、そんなことに重要かどうかなんてことは関係がない、海の指先が触れたところから遠く深い
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