画用紙の上に散らばっていくクレパス/ホロウ・シカエルボク
 
深いどこかへと運び去られてゆく、近頃巷じゃ明るく元気にポジティブに、清く正しく美しくなんて生き方がやたらと重宝されている、俺はそれが嫌いだ、それは人生を、人間を馬鹿にしているように思える、すべてを見つめ、受け止めて生きるからこその人間なのだ、なぜ清い心だけが生きる力のような言い方をする?「馬鹿馬鹿しい」思わず口をついて出る、そして初めて夜が訪れていることに気づく、俺は部屋を出る、もう来ることもないだろう、気まぐれはただの気まぐれだった、表通りに出て歩き始めたとき、二階の外廊下がすこし軋んだような音を立てた、それはもしかしたらさよならの挨拶だったかもしれない、でも俺にとってはそれがなんであろうと大した意味はなかった、晩飯はなににしようか、ぼんやりと考えながら、俺はまず眠る場所を探すことに決めた。


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