画用紙の上に散らばっていくクレパス/ホロウ・シカエルボク
 
なかった、そうして座っていると、数度だけあったことのある隣の部屋の水商売の女のことや、一階の奥、つまりこの部屋の真下にいた半分ボケた老人のことなんかを思い出した、ああ、暮らしていたのだ、と俺はひとりごとを言った、それは、今現在の生活よりもずっとリアルなものに思えた、リアルな暮らしだったように思えた、自由だったからか?それは少し違う、ではなんだ?きっと、リアルな彩がそこにはあったせいだ、ではそれは何故だ?それはたぶんどこの、どんな場所にも俺自身の興味があったせいだ…なんて、そんな表現ですべてを言い尽くせるわけもないことはわかっちゃいるけれど…どんなことをしていたのだろう?特別意思も意向もあったわけで
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