画用紙の上に散らばっていくクレパス/ホロウ・シカエルボク
閉ざされたままの部屋の、すりガラスの小さな窓のついたキッチンの床に腰を下ろして、目を開けている時に見える夢にうつつを抜かしていた、部屋は隙間風ばかりで寒く、記憶とともに凍てついていて、それはもはやすでに死んだ誰かの生命の残響だった、床には降り始めたばかりの新雪を思わせるくらいの埃が積もっていた、西日がちょうど窓からまっすぐに差し込んでくる時間帯で、そんな床が鮮やかに照らされるとなぜか、幼稚園児のころに玄関で遊んだ名前も思い出せない誰かと過ごした時間を思い出した、そんな無垢な頃のことだけを思い出すことが増えた気がする、たぶんそれは数限りない欠落を繰り返してきたせいなのだろう、思えばイメージにはい
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