行方知れずの抒情 ニ/ただのみきや
 

葬儀の読経の最中
叔母は袱紗をわたしに手渡した
中には小さなアンモナイトが一つ
とても冷たかった
少女の叔母を雨が鳴らし続けている
どこまでも透けて消えてしまいそうだ

お茶を飲みながら
祖母の黄色く欠けた爪を見る
かつて麦を踏んだ素足
潤んだ土の匂い

凹面は深く己を咬む
大部分のものを失くしてしまい
別人としてペンは戸惑いながら
虚空の痛点を探っている
レコードには
繰り返す詠嘆のノイズばかり
最初から何も音は入っていなかった
刷り込まれた抒情
情緒の傾斜角

何十年も前の古い漫画雑誌が
いつまでも祖父母の家にはあった
?がりも続きもわからな
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