行方知れずの抒情 ニ/ただのみきや
今に至るまで元気で暮らしているという説もある
だがもう数十年前の話だから
すでに死んでいてもおかしくはない
この話自体がデマであったと言う人もいる
だが似たようなことは幾らでも起きてはいる
極めて意図的に空爆も行われたりする
フロントガラス
西日が溢れ
居場所を追われた眼は沈む
火の中の胡桃
この雪もまた
述べることは叶わず
力尽き 透けて流れ
微かな囁きすら
意を結ぶこともなく涙となって
目を細めれば放射状に伸びる
線香花火
もうすることはない
今は車中から見つめる
橙色の街灯だけ
情緒の行方
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