ないものがあらゆるものを塗り潰す/ホロウ・シカエルボク
概念がその駅にはなかったのだ、だから俺は気まずくなって駅舎の隣にある手洗いに逃げ込んだ、だけどそこは掃除はされてはいたけれど消臭剤のにおいが強烈過ぎてとても長居することは出来なかった、何度も唾を吐いて口の中のイメージを更新しなければならなかった、俺は自動販売機を探した、駅舎の中にはそれはなかったのだ、数メートル先のシャッターの降りた商店の前にあるのを見つけてそこへ歩き、小銭を入れて甘いジュースを買い、振り返ると駅は消滅していた―初めからそんなものは存在していなかった、というような鮮やかな更地がそこにはあるばかりだった、俺は狼狽えて買ったばかりのジュースをすべてこぼしてしまった、そのジュースはぼこぼ
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