アラウンドアバウトミッドナイト/ホロウ・シカエルボク
えなくていいんだよ
やってきたことが染みついているなら
身体はだいたいそのために動き続けるものだから
風が暴れている
明日は太平洋側でも雪が降るところがあるって
唇の形を気にし過ぎている女が巨大な地図の前で話していた
雪の日には素敵な思い出がたくさんある
たとえぶるぶると凍えていたってね
幼いころ住んでいた天井の木板に浮き出た三つの染みが
苦しみをうたう人の顔に見えてしかたなかった
怖くはなかったけど目が離せなかった
あいつはいつ喋り出すんだろうとずっと見上げていたんだ
時々妙な音を立てることがあったけれどそれは天井裏に忍び込んだ蝙蝠の仕業だった
生きてきた限
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