点の誘い・線の思惑 五/ただのみきや
が降った翌朝
結んだマフラーを瑪瑙のブローチで留めて
凪ぎの真っ白い海へ出た
目覚める前のひと時 立方体の冷気
夜の睫毛に纏わった淫靡な夢の残り香も消え
暫し裸の木になれば 鶫も数羽よって来て
はたと気付いて引き返す
狐の足跡を気まぐれに辿り
膝より上まで埋もれてしまう
東の空では淡い雲が紅を差したまま
去った背中を見つめていた
このまま白い海深く埋もれてしまえば
春まで誰にも見つかることはない
芽を出すように腕が伸び
目覚ましを止めて起き上がる
ロマンス
ロマンスが描かれて歌われて消費されて往く
その骨粉までも残さぬように
もしも
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