点の誘い・線の思惑 五/ただのみきや
 
しも魂が白く石化した樹のように
いつまでもひび割れた断面を晒すのでなければ
ロマンスは空虚な噂
誰かの風に踊らされただけ

もしも己の半身が塩の柱になったまま
出来事よりも苛む朝の光の訪れ毎に
滅び去ったものを振り返るのでないなら
ロマンスは菓子の空箱

ロマンスに成就はない
結婚などとは違う
いつまでも結ばれず
いつまでも終わらない

ロマンスは幻獣のように表象を変化させ
磨かれる原石のようにイメージは燃え続ける
生涯付きまとい生涯追いかけるただ一つ
それ以外は性欲と自己愛と打算

ロマンスが秤にかけられ売りに出される
流行り廃れで黄ばんで往く




留置場

手紙 冷たい光の束
音符に起こせない歌声の封印

疲労が老犬のように蹲る
息継ぎのない沈黙だった

プランクトンが燃えている
明滅の果て闇に迎えられ――

人の構造は宇宙には向かない神にも
適応できずに頭の中で造り変える



                《2020年2月11日》

           





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