とおい記憶/草野大悟2
 
すると、遠くに赤い池のようなものが浮かんでいる空間にたどりつく。
 池の真ん中に、俯せになった女がいる。尻が異様なほど白い。その尻の右半分が突然、グズリ、とくぐもった音をたてながら崩れてゆく。
 見える。真っ白く輝く骨盤が。鼻をつく腐臭が心地よい。心地よすぎておもわず左側の尻を咬む。腐臭が体の中に入ってきて射精しそうになる……

「そろそろ行きましょうか、あなた。私たちの秋へ」
「そうだな。そろそろ行こうか」
 おもいだした。秋を、解きほぐしてはいなかった。
 そうだ。解きほぐさなければ、永遠にこの場所にとどまったままだ。
 行かなければ…。
 歩いてわずか三分の川沿いに秋は横た
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