点の誘い・線の思惑 四 /ただのみきや
 

来訪者はいつまでも中心に往き着けないが
迷宮の主もまた外へ出られない囚人なのだと言う
それは美しい女性かもしれない
恐ろしい怪物かもしれない
ちらりと影が見えても一瞬で消えてしまう
かすかな声も反響して何処からかわからない

侵入あるいは脱出を困難にするために
迷宮は創られる
ではなぜ壁で覆わず入口を設けるのか
すべては方便なのだ
迷宮そのものが目的であり作品で
姫君の救出も怪物退治も秘宝探しも
元型的テーマに過ぎず
様々な派生的側面あるいは仮面を持つ

こころの混沌をことばの秩序に置き換えれば
ことばは迷宮の相を成す
わたしは迷宮に住まう詩について想う
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