点の誘い・線の思惑 四 /ただのみきや
 

もといた処に還ってお行き



瞑目

朝の氷の光ひとしずく
点眼する
明るい闇 薔薇の花弁
時を解いて

同じ毛糸で編み直す
今日という未来が
着心地悪くならないように

瞼の向こう
景色はのたうち回る



迷宮

クレタ島の一本道とは異なり
今日迷宮と呼ばれるものは
秩序により創り出された混沌の模型
だが難解な迷路とばかりは限らない
美しい庭や古い石碑
人の歩みを止めさせ
夢見心地にして彷徨わせる
同じ回廊も巡るたびに別の姿を見せ
天井の模様や壁のレリーフまでが
なにかの暗示を秘めている
そんな錯覚すら起こさせる
[次のページ]
戻る   Point(2)