幽霊船/朧月夜
謎は解明されない。この世の仕組みとは別の仕掛けで、幽霊船は動いているのかもしれない。そして伝承だけが残る。幽霊船の歌を誰かが歌った。人々は彼のことを狂人と言い習わした。この世では吟遊詩人だけが幽霊船の歌を歌うことができる。幽霊船の呪いからは解き放たれているのだろうか、彼らは。しかし彼らは土地から土地へと渡っていく。誰も吟遊詩人の歌を聞き続けることはできない。そうして時が経てば忘れ去られていく。時折、ほんの時折、はるかな沖合にははかなげな蜃気楼が立ち上がる。それを目にして、人々は幽霊船の噂話を立てる、しかもこっそりと。沖へ沖へと舟を漕ぎだしても、しかしそれに辿りつくことはできない。蜃気楼は遠ざかるば
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