幽霊船/朧月夜
るばかりだ。中には波に飲み込まれてしまう者もいる。かつて男だった者、かつて女だった者の魂を乗せて、幽霊船は進んでいく。誰もそれがどこへ行くのかを知らない。誰もそれが何のためにあるのかを知らない。きっと神からは見放された者たちだけが、幽霊船を動かしているのではないだろうか。彼らは幽霊船と一体になって、北の国に住まう。オーロラが彼らを見守る。流星群が彼らの糧となる。今日もまたどこかの海に、幽霊船は浮かんでいるのかもしれない。報われない者たちの魂を乗せて。あるいは報われた者たちの魂を乗せて。こんなことは忘れてしまうが良い。あなたたちの誰も、今は幽霊船に乗れはしないのだから。そして幽霊船に乗せられた時には、何もかもを忘れ去っているのだから。この世の理も、条理不条理も、悩みも悲しみも、喜びも憂いも。ただ、北の国には幽霊船がいる。吟遊詩人である「わたし」は、人々の間にこっそりと噂話の種を撒きながら、やはり幽霊船と同じようにさまよっている。
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