僕たちはすべて水際(みぎわ)にいる/朧月夜
ここというのはここさ。
誰もが晦冥のなかで、
ひっそりと思いを隠している。
水底(みなぞこ)の魚のように。
ためらいがあるのであれば、
いっそのこと放り出してしまえば良い。
あなたたちも同じでしょう?
涙が水晶のように、
深い谷へと落ちていった。
その行く末を高いところから見守る。
世紀末はとうに過ぎたのに、
歴史家はあらたに、
歴史を作り出そうとする。
ありきたりの言葉で、
優しく慰めてほしいと、
羊たちは寡黙に草を食んでいる。
わたしたちは、
行く宛もない羊飼い、
ただ鈴が鳴るのに耳を澄ませている。
空がもしも落ちてくれ
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