無題/朧月夜
現代ならば夜行列車ではなく、
夜行バスに乗っていく。
でも誰も、
銀河バスなんていう奇妙なものは思いつかない。
(あ、毛糸で編むのを忘れた)
(あれはあなたのための毛糸だったのに)
車窓には夢だけが流れていて、
わたしは夜の中に鎮座している。
くぐもった声のような、
わたしの脳漿のなかの思い。
たゆたっている……
(あ、毛糸で編むのを忘れた)
――
悲痛、という心がどこかにあって、
わたしの魂は重く首を垂れている。
あなたは自動運転車に乗っていくように、
わたしを去る。
それがまるでわたしのせいかのように。
(あれはあなたのための毛糸だったのに)
――
鏡を
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