アンダーカヴァー・オブザナイト/ホロウ・シカエルボク
 
まそいつの背中の位置だった、俺は静かにスツールを下りて、一番近くに飾ってあったズブロッカのボトルを握り、ドラゴンを退治する勇者みたいに若者の頭へと振り下ろした、若者は一度ぴいんと背伸びをして横向きに倒れた、ボトルは割れて、高い化粧品みたいな香りが辺りに漂った、ふう、と俺はもとの席に腰を下ろしてバーテンを呼び、弁償すると言ったが彼はそれを飲まなかった、あんたが動いてくれなければ酷いことになってたかもしれない、と言って、今日の飲み代はタダにすると宣言した、そんな、と俺は異を唱えたが押し負けた、これからも来てくれるなら三度に一度はあんたから料金はもらわないよ、とバーテンは言った、それは魅力的だ、と俺は舌
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