アンダーカヴァー・オブザナイト/ホロウ・シカエルボク
は舌なめずりした、でも当面は若者のために救急車を呼ぶべきだった、まだ誰もそれをした気配がなく、若者はズブロッカの漬物になって床に転がっていた、電話を使わせてくれと言ったら、バーテンがじゃあ私がやろうと言って電話を掛けてくれた、喧嘩騒ぎだと言ったら警察が来ることになって、俺は日付変更線を過ぎても店に居なければならなくなった、とはいえ、それはそんなに長くはかからなかった、俺が経緯を説明して、バーテンがいくつか付け足しただけだった、あんたみたいな人がたくさん居たら俺たちの仕事も減るんだがな、格闘家みたいな黒人の警官は皮肉とも賞賛とも取れる表情でそう言った、俺はこれで給料をもらえるわけじゃないんだぜ、と返したら楽しそうに笑って帰って行った、パトカーが走り去るのを見届けてから俺も帰ることにした、今日はすまなかったね、それから、ありがとうとバーテンが言った、なに、と言って俺は首を横に振った「たまたまさ」、そして俺は店を出て歩き始めた空は曇っていて、つまらない舞台の暗転みたいにすべてを隠していた若者のことがほんの少し気になったけれど、病院まで歩いてみようという気には到底なれなかった。
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