原始人魚/ただのみきや
古びた皮袋の中 海は
瞬く間に押し寄せて
また引いて往く
うす紅の鱗に耳を乗せ
風下へ流せば
なにかに誘われ欹てながら
青白い絃を震わせた
骨だけになって動かせない手
それが言葉だった
カーテンもなく開け放たれた窓から
全身骨格の標本が見える
したり顔の虚無が神の振舞いをする
肥大して
爛熟した
幼児神の
仰け反る頭が
ぼとりと落ちる
からだは文字へと変わり
文字もまたからだを得る
退行を重ねながら
海へ帰る
わたしを生み
わたしを喰らい
わ
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