原始人魚/ただのみきや
 
ている
 頭の奥からガムランが響く
凍てつく海を渡る
狂った蝶の羽音を咥え
微笑む人魚を 懇ろに抱いた
 胎に宿した真珠は
満ちも欠けもしないで固く閉じ
 眼差しを投げ返す
  耳朶に纏わる幻聴を揺らしながら


血なまぐさい初物として
人魚は一斉に食される
家々の食卓に
 会話と咀嚼音が湧き上る
  クロッキーによる抒情性から
乖離して
 原始的宗教へ
      回帰したこどもたち
           手ぶらで越境し
     なにかを拾って来るが
   気づかないまま
      なにかを失くしてもいる
 絵画の中の遠近をまさぐりながら
 古
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