原始人魚/ただのみきや
ている
頭の奥からガムランが響く
凍てつく海を渡る
狂った蝶の羽音を咥え
微笑む人魚を 懇ろに抱いた
胎に宿した真珠は
満ちも欠けもしないで固く閉じ
眼差しを投げ返す
耳朶に纏わる幻聴を揺らしながら
血なまぐさい初物として
人魚は一斉に食される
家々の食卓に
会話と咀嚼音が湧き上る
クロッキーによる抒情性から
乖離して
原始的宗教へ
回帰したこどもたち
手ぶらで越境し
なにかを拾って来るが
気づかないまま
なにかを失くしてもいる
絵画の中の遠近をまさぐりながら
古
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)