201912第四週詩編/ただのみきや
 



 *
遠い夜を追いかけてここまで来た
あと三十二小節といった距離だろうか
夜の入り口の薄暗がりに女の後姿が見える
側まで近づきたいが追いつくことに躊躇がある

心臓はところどころ八分や十六分休符を帯び
裏表が入れ代わるファンキーなラインを刻んできた
どんなセッションにも終わりがあるし
終わり方が重要だと感じてもいる

液体窒素に浸したバラを一輪
心臓は青黒く壊死しつつある
息苦しさはとっくに通り越し
あばらだけが開き放たれた窓のようだった

大きく蛇行したベースラインだった
十数年前にフレットを抜いた
メキシコ生まれのプレジジョン
傷だらけの安物で
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