201912第四週詩編/ただのみきや
老いと若さ
*
一足先に夜は来ていたが
意識はまだ白昼を彷徨っていた
だがいつまでも騙し続けることはできない
これは夢ではないのだから
一枚の暗いセロファンか
いっぱいに広がったネガフィルムのようなものが
ゆっくりと歩く速さで迫って来た
真新しい戸惑いを心地よく感じていた
目の前まで押し寄せた暗いセロファンを
指で破ると 空気のように抵抗もなく
ただ少し冷たい感じがした
意識が夕闇に捕らえられた瞬間だった
*
液体窒素に浸されたバラは
砕け散る刹那なにを想うだろう
乾き切った枯葉とそっくりな
微かな声で笑うだろうか
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