201912第三週詩編/ただのみきや
 
遠いほど早く
近いほど遅い

エントロピーの海を漂う海月は
真昼の月を鏡の中の虚像だと思う

夢が現に囁いた
「おまえは虚像に過ぎない」
御菓子の包み紙だけが幾つも落ちている
それもすぐに風が運び去る

死とニュースが競争する
後のものが前のものを消して往く
死が死を相殺するかのように

ニュースにはならない
身近な死だけが
いつまでも側にあって動かない



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サルナシの汁 舌から喉へ
うららかな日差しと樹木の陰影
あなたの瞳の光沢を滑り景色は回る
どの小路も木陰もすべて繋がらない
空すらも固く閉じ
世界は生まれないま
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