201912第三週詩編/ただのみきや
 
書くことで絵画を音楽にする
読むことで音楽を絵画にする



 ***

文字を持たない民族の
言葉は記号ではなく信号だった
憶えられ
伝えられ
受け継がれる
民族の記録以上の
記憶として
絶えず蘇る
言霊の響き
すべては詩的であり
詩は書かれることなく
詠まれることすらなく
呼吸のように会話の中に立ち現れた
子を諭す親の口から
寝屋の男女の睦言から
火を囲んだ男たちの自慢話から
それでもやはり
人々を魅了する語り手歌い手はいた
その口から発せられたことばを
皆が借り受け
自らの口で発してみたり
神へと捧げられ
特別な日に皆で聴くもの
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