言葉のボール/服部 剛
 
特別支援学校に通う
息子が二年生の
ある夜
初めて妻に打ち明けた

ダウン症告知のあの日以来
息子について後ろ向きなことは
もう決して言うまいと
心に決めていたことを

語らう夫婦の目線の先で
おさな子の面影のまま夢を見る 
息子の寝顔は
いとおしい
いとおしい、が 
胸の内の葛藤は
あれから消えたわけじゃない 

言葉のボールを息子に
投げても、投げても、返らずに 
ぽとり、と地面に落ちる
――息子は壁か/壁じゃない 
の、自問自答の日々は
今も続く 

ずっと妻を気遣い
口に蓋をしていたと
打ち明けたら
かえって妻にはよかったらしい

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