遭難/ホロウ・シカエルボク
 
、なにかひとこと返すわけでもなく、これといったアクションを起こすこともしなかった、雪は少しずつ大きな粒に変わり、すぐに景色を埋め尽くすまでになった、おれは立ち止まり、きみが雪の中へ飲み込まれていくのを見た、もう探せないことは明らかだった、人気のなくなった公園のなかで、雪をしのげる大木のそばのベンチに腰を下ろして、ぼんやりとしているうちにいつしか眠っていた、そしてきらきらと輝く春の夢を長いこと見ていた、目が覚めるとあたりは薄暮に包まれていて、あれほど降っていた雪は少しも積もってはいなかった、ずいぶん昔にもそんなことあったな、こどものころのことだった、そんな雪にはロマンティックな思い出があった、気温は
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