遭難/ホロウ・シカエルボク
 
温はますます下がっていて、おれは震えながら公園を抜け出し、カフェを見つけ出してドアを潜った、グランド・ファンク・レイルロードが流れていてなぜかおかしくなった、カフェ・オレを注文して腰を下ろしていると、どこまでもどこまでもソファーに沈み込んでいく気がして、慌てて立ち上がってコートを脱いだ、そうすればそれ以上沈まないで済む気がした、カフェ・オレは暖かく、だけどどんな味もしなかった、あのころのように子供ではないのだ、感情の糸がどこかで断ち切られている、普通の一日のように古めかしい店のなかで、時間を掛けてそれを飲み干した、おれのなかにはまだ雪が降り続いていて、それは辺り一面をまっしろに染め上げ、いつもの場所に戻るためにはどうすればいいのか、おれにはまるで見当がつかなかった、ちくしょうめ、おれは立ち上がり、金を払って店を出た、戻ることは出来る、一晩眠れば落ち着きを取り戻すことは出来るだろう、ただそこにはかならずもの言わぬ欠落の影があり、もう二度と同じ形になることはないだろう。


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