201912第二週詩編/ただのみきや
 

もう少しも秘密は入りそうにありません

居心地悪かったのか
飛び出した金魚がテーブルでぴちぴち跳ねています

午後にはお茶とお菓子 夜にはお酒
お父さんは人魚とキスしたことがあるそうです



 ************

声を嗄らして注ぎ出す歌に
走る柔肌の影
暗喩のようなあなた

わたしは目と耳を裂けるほど開き
なによりも乾くことのない傷口を無造作に晒し
まるで礼拝者が神に捧げるような面持ち

抱きしめていた
あなたの歌声を
唯一それだけが許されていた

だが歌声は風のように
両の腕をすり抜ける
傷口を激しく共鳴させながら

劇の仮面の
[次のページ]
戻る   Point(6)