彼女の時間。/竜門勇気
 
なった彼女の宗教は
いつの間にか部屋の中にいた
古いイカした時計みたいで
心地が良い
冷たい声を尊びながら
正しそうな言葉がありがたいよベイベー

辞書に隠したタンブラーを
テーブルの上に並べる
タウンページに埋め込んだ缶ビールを
取り出して部屋をぐるっと廻る

イカした時計は好きさ
彼女の痕跡が部屋に増えるのも好きさ
だから勘違いしてくれるなよ
ぼくは君以外のものなんてどうでもいい
君を形作る環境や、過去
道端の乾いたヘドほども興味がない

古いイカした時計を見て今日も彼女は出かける
そんな仕草だけが好きさ
止まった時計は日に二度、過ぎる時間が隣に並ぶ
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