彼女の時間。/竜門勇気
ぶ
すこし早まった彼女の時計が
正確さを取り戻すのはいつになるんだろう
引き出しの奥にしまわれて
いくつか貨物列車が真夜中を走れば
そんな時が来るかもしれない
古いイカれた時計が好きさ
おんなじくらいは彼女が生きてることが好きさ
それ以外は
別にどうでもいい
彼女があの時計を見て今日も出かけていく
ぼくは彼女以外が世界に及ぼす影響なんてどうでもいい
あの時計が正しさなんて知りませんように
あの時計がそんなクソみたいなものを望みませんように
日に一度も正しくなくてもいい
たったいちど正しくて二度と正しくなくていい
彼女の世界だけでもいいだろ?
ぼくと誰かの世界が一度でも美しかったことがあるか?
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