アンダースローに投げ込まれ/こたきひろし
ったら
持ってる若さと女を売ってでもお金を稼ぎたい
減るもんじゃないしさ
父親の俺は黙って聞いていた
ほんとうは
なに言ってるんだ娘よ
お父ちゃんがそんな事させる訳ないだろ
お前たちをこの命と引き換えにしても守るよ
と素直に強く言いきれない
不甲斐ない父親だった
俺はまるで悪酔いした後のゲロみたいに
胸の底から突き上げてきた悲しみに
眼から涙をこぼしてしまった
それは忘れようとしても忘れられない
六十歳定年を間近に控えた日
会社から予想外の解雇通告を渡された日
夜に開かれた家族会議の場での事だった
会議の閉めに長女が言った
安心してね
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