たとえば小石の落ちる音のように/ホロウ・シカエルボク
 
、床はリノリウムで、いまのところしっかりしている、全面ガラス窓で(すべて割れているけれど)、山頂からの美しい景色を眺めながらカウンタ―で一杯やることが出来る―営業していればの話だが…カウンターとストゥールは残されている、そこに腰を下ろし昼飯を食べる、雨はもうすっかり上がっている…にょきにょきと山肌に生えた木々の間からもうもうともやが立ち込めている、それはこのフロアーにも忍び込んでくる、一番好きな景色だ―にわか雨の降る日にはここに来たくて仕方が無くなる、ここに腰を下ろして、この景色を眺めたくなる、眺めているうちに何時しか自我は失われ、心はこの失われた時間のなかで気ままに漂う―古い歌は古いものではなく
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