たとえば小石の落ちる音のように/ホロウ・シカエルボク
なくなる、それは過去という名の今であり、存在と呼ぶにはあまりにも空虚だが、まるでなにもないかというとそんなことはない―本当に求めているのはそんなものなのかもしれない、本当に、幾分煤けた人生を躍起になって生きている理由は―意味を失くすことを怖れてしまうと、たいていのことは見えなくなってしまう、ただ生きていることには、より生きるための手掛かりが隠されている、目を閉じて素直な空気を吸い込むと、人間の枠組みを飛び越えられる気がした、強い風が吹いて細胞が入れ替わる、それはコンクリートの空間を自在に泳いで、最も遠くに居る何者かに届けるための、奔放な旋律の歌を、奏でる―。
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