路地で立ち止まっていたナミ/ホロウ・シカエルボク
い住所だった
「この近くの家だ」と俺は言った、振り返ると女の顔がすぐ近くにあった
目が異様に丸く、大きく、高く尖った鼻の下に小さな口がついていた
まともではないのだと一目でわかる表情をしていた
「帰り道だから届けて帰るよ」
あの、あの、と女は言い淀んでからようやく
「ありがとうございます」と言い、ぺこりと頭を下げた
俺は笑って頷いてから猫を連れて路地を離れた
それから女は俺を警戒しなくなった、会えば駆け寄って来て
「こんにちは」と笑って挨拶した…ほとんど夜だったけど
俺もなるべく路地を通って帰るようにした
俺たちは路地の中ほどにある取り壊された住宅の基礎に座っていろいろな話を
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