路地で立ち止まっていたナミ/ホロウ・シカエルボク
 
まり彼女には近づかないようにした
そんなふうに彼女とすれ違いながら二年近くが過ぎた頃だった
ある夜遅く、気まぐれに立ち寄った路地で女が猫をあやしているのを見た
時間のことを除けばあまりにも普通の光景に見えて
俺はつい彼女に話しかけてしまった
「その猫、どうしたの?」
女は創作舞踏のような動きでゆっくりと顔をあげて俺のことを見た
「ア」 と「エ」の中間のような声を何度か出して
おそらくは会話の仕方を思い出したあと
「迷子ちゃん、みたい…」と真新しい首輪を指差した
俺は猫に近付いてその首輪を見た、なにかが書いてあるようだったので
携帯の灯りで読んでみるとそれは飼主が書いたらしい住
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