通り魔たち 5/春日線香
 





宙に浮かぶ片足の靴は
よく見ると糸で吊られ
静かに回転していた
餡子がぎっしりと詰まって
重そうだった







積荷を降ろして
トラックは去っていった
タイヤの跡には水が溜まり
それで化粧を直す
顔のない動物もいた







腕を広げた案山子のようで
案山子ではなかった
タイヤで平たく潰された
猫なのかもしれない







昼も夜も
野原で回っている室外機は
自分が幽霊であると
知りながら回る
回り続ける







折れた枝の先から
複数の白い紐が伸びて
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