通り魔たち 5/春日線香
 

うつろに宙を掻いていたが
鳥は見向きもしなかった
雲は素早く流れた







落ち葉の一枚一枚に
墨の文字が浮かび上がる
しゃがんでそれを読んでいた
透明な人が
轢かれて粉々になる







日差しを避けて
かたつむりが多く住む
雑木林の下生えに
点々と
手首が落ちている







敷き詰められた畳は
全て腐っていた
そこに住む家族は
ガスで死んだというので
声が少しおかしかった







川は地下深くを流れて
輝く五色の花々を運んだ
時に人がそれを得て
不死になることもあった







羽根と骨の塊になって
ゴミはよちよちと歩く
レールの上の光の反射
乾いた砂利が勢いよく
垂直に飛び跳ねて
静止している







もう長いこと
膝を丸めて埋められていた
人が起き上がって
雲の流れる空を眺める
そのすみれ色








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