通り魔たち 5/春日線香
て
うつろに宙を掻いていたが
鳥は見向きもしなかった
雲は素早く流れた
*
落ち葉の一枚一枚に
墨の文字が浮かび上がる
しゃがんでそれを読んでいた
透明な人が
轢かれて粉々になる
*
日差しを避けて
かたつむりが多く住む
雑木林の下生えに
点々と
手首が落ちている
*
敷き詰められた畳は
全て腐っていた
そこに住む家族は
ガスで死んだというので
声が少しおかしかった
*
川は地下深くを流れて
輝く五色の花々を運んだ
時に人がそれを得て
不死になることもあった
*
羽根と骨の塊になって
ゴミはよちよちと歩く
レールの上の光の反射
乾いた砂利が勢いよく
垂直に飛び跳ねて
静止している
*
もう長いこと
膝を丸めて埋められていた
人が起き上がって
雲の流れる空を眺める
そのすみれ色
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