夜明け前の雨/山人
 
なかったが、雑味の無い多彩な出汁から発せられる奇妙な深い味が最後まで私を飽きさせなかった。また、そのスープに太麺が絡み合い、一つの作品に仕立て上げられていた。
 帰りの途中、長男が帰省するとのことで妻はスーパーに立ち寄り、私は自分の山作業用の食糧を買った。
その昔、次男がまだ小さいころ家族で来たことがあったスーパーだったが、もう十五年くらい前だったのであろうか。
それから後だったか、アルバイトで近くの道路で交通誘導員をしたこともあった地だった。
なにかに怯えながら必死で日銭を稼ぎ、捨て身で日々を過ごしていたころだった。
 自宅に着く四十分ほど前、乱視が酷くなった私のために妻がメガネ屋に寄
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