頭のいい子が幸せになるのは難しい/ホロウ・シカエルボク
達の存在、プライベートなどはどんなに探っても明らかにならなかった、名前はドロシーといった―家は見すぼらしい一軒家で、窓と鍵がきちんとしている廃墟といって差し支えないものだった、刑事はその家の前の狭い庭に駐車されている真っ赤なシトロエンを想像して首を横に振った、騙し絵を見せられてるような気分だったことだろう…私もそうだった―彼女はあのシトロエンを自分で買ったのだ、両親が死んだときに入ってきた金、それから父親と母親がそれぞれ隠していたへそくりに、何年も働いて貯めた金を足して…真っ赤なシトロエンは彼女の夢だった、たったひとつの夢だった―給料日のたびに彼女は嬉しそうにそのことを話した、その話はいつも、誰に
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