通り魔たち/春日線香
 

黄昏時に木肌に触れると
人間の舌のような風が
耳元を吹き過ぎるという







地蔵の頭上を
飛行機雲が伸びていく
その束の間にだけ
地蔵は忿怒の表情をする







ブロック塀の穴に
みっちりと肉が詰まっていた
轢かれた空き缶が
内臓をはみ出させているのも
そう珍しくない







運ばれていく事故車の上に
小さな獅子舞が舞う
華やかに紙吹雪を撒いて
空中を上下に
無音のままで







電柱の高いところに
ビニール袋が引っかかっていて
その中で蛆混じりの赤土が
延々と何
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