老いたペンギンのメモ/由比良 倖
 
多分全ての音楽が好きで、もちろんその中でも特に好きな音楽(特にギターロック)があって、毎日毎日、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを聴いてそれだけで死んでもいいくらいで、尚も、音楽理論の楽しみや、ギターや、随分と歳を取った馴染みの、おかしな声で歌うことや、ピアノを弾いたり、シンセサイザーやコンピューターの夢を見たり、でも、ああ、バンドを作りたいな、スリーピースや、欲を言えばカルテットで、と、うずうずしたり、と、でももう一度引っくるめていえば、文学と音楽があることの美しさに、砂漠を八年間歩き続け、ついに流氷と北海の波に辿り着いたペンギンのように、また泳げることの100パーセントの自由に、もはや何に感
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