老いたペンギンのメモ/由比良 倖
に、また鬱になるかもしれない、という不安を脇に置いたままで、ワトソン紙にチャコールで描くようにではあるけれど、夢みることが出来るようになってきた。僕はもう、何にも好きじゃないのだと思っていた。でも、僕は言葉が好きだ。より正確には、文学が好き。本が好き。そしてやっぱり、やはりおかしいくらい、音楽が好き。本好きも、うん、おかしいくらいなんだけど。僕のやりたいことはシンプルだ。日本語が好きで、英語が好きで、フランス語が好きだ。勉強するともなく、教則本の例文の単語のひとつひとつが、とても興味深い。活字を指でなぞるだけで、純粋な、僕の中の、活力の泉みたいなものが、嬉しさで揺れるような感じがする。それから多分
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