老いたペンギンのメモ/由比良 倖
て湿らないし、それで、僕は僕の脳幹か、それとも僥倖にも、自己の鍵穴に、それを、躊躇いなく撃ち込んだことだろうに。(僕はアメリカに行ったら、必ずその、同じ銃を、買おうと思っている。僕にとってお守りであり、今では過去の八年間を称える、勲章のように、僕の脳内暖炉の上に飾られている、僕の為の、青春の遺品のような銃。)という訳で、さっき、ピストルを捨てた、というのは実は嘘なのだけど、ピストルの温度が変わってしまった。自殺に使えるようになった途端、それはピストルとしての本来の役目を終えた。僕は今は、僕自身の書斎の中で、弾丸を壁に撃ち込んで、遊んでいる。暖かい手触り、時間をかけて、幸福の形見となった、僕の銃。ね
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