老いたペンギンのメモ/由比良 倖
文学では決して味わえない、まだ誰も味わおうとは思わない、精神の浮浪生活を送った。その日々は、しかし今、僕に魅力的な皺を、暖かい、時間のかかる、懐かしい皺を、僕の脳内に刻んでくれた。文学青年には決して刻まれないだろう、孤独な、お気に入りのカーペットにノミが暖かい寝床を発見するように、僕自身をそこにすっぽりと受け入れてくれる、僕の、僕自身の、誰のものでもない皺。その皺が僕はとても好きだ。その皺は僕の誇りだ。僕はピストルを用意していた。ピストル(Ruger SP101 2.25" $719.00)は実のところ、雨の中で、火薬が湿っていた。もちろん、架空のピストルだ。本物があったなら火薬なんて湿
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)