老いたペンギンのメモ/由比良 倖
のままに、ライブラリーも懐かしく僕流に整頓されたまま、少年時の僕の面影を残したままだった。僕はもう今は、それだけで満足な気持ちだ。自己から阻害されている間、僕は僕の為の鏡を持たなかった。久しぶりに自己の大広間の鏡面に映された僕は、思っていたほどには変貌していなかった。というより、年齢よりもずっと、少年時の面影を残したままだった、というか、打ちひしがれてはいたけれども、子供のまま、と言っていいくらいだった。確かに僕には皺が増えた。けれども老年は少年に似ている。僕は青年期を通らなかった。よって僕は、より少年のままに老境を迎えた。今、今の僕を、僕は割に気に入っている。僕は文学少年だった。青年期、僕は文学
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