老いたペンギンのメモ/由比良 倖
が酷いので、射精した瞬間に死んでしまう気がして、どちらにしろ性欲も無かったけれど、オナニーもしないし、本も音楽も死んでるし、椅子に座っていると意識が飛びそうで、だからベッドと椅子の間だけを行ったり来たりして、いつ眠ったのか分からない、という生活を、途方も無く長く続けてきた。指が常に震えていたために、ペンで書くことが出来ずに、でも、キーボードで書くことだけは、ほぼ毎日続けた。大体いつも、そろそろ良くなってきてる、と書いた。両親は、いつも僕に腹を立てている気がした。僕は自分の文章を見るのが本当に嫌だった。この世界には、苦しい人が苦しいときに苦しさを表現出来る語彙が存在しない。それでも書き続けていたのは
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